審美歯科普及協会

歯についての豆知識

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審美歯科は老若男女すべてのための予防医学

「審美歯科」という言葉は、日本ではまだ一般に深く浸透してはいないと言えるでしょう。美容整形外科に含まれる一部門に「美容歯科」というものがありますが、言葉の意味はこちらの方がわかりやすいかもしれません。

しかし、「審美歯科」と「美容歯科」には目指すところのちがいがあります。美容歯科は、持って産まれた歯と口腔に手を加えて、より美しく、より理想にちかい形に整形することを目的とします。審美歯科は、そこまではしません。持って産まれた歯と口腔は基本そのままで、その本来のはたらき・役割を十二分に発揮できるようにしながら、その清潔さ、さわやかさ、顔立ちや表情と調和した健康美を引き出し、保つことを目指すのが審美歯科です。

では「美容整形」に対する「エステ」のようなもの?

それでは、審美歯科とは「美容整形」に対置される「エステ」のようなものなのかと、そういうとらえ方もできるかもしれません。部分的には正解です。「日本審美歯科協会」の英語表記の「審美歯科」に当たるところは Aesthetic Dentistry となっています。「エステティック」ですね。美しさを目的としますが、整形まではせず、生まれ持った本来の美しさを引き出そうとするにとどまります。その点で似ています。

ただ美しさのためだけでなく

しかし、審美歯科が目指すところは「ただ美しさだけ」ではありません。美しい歯は、同時に健康で機能的にすぐれているものなのです。また、健康で機能的な歯は、常に美しいのです。審美歯科は、美しい歯を目指すことで同時に日本人の健康水準のボトムアップを目指します。日本人の健康寿命を長くし、その質も高めることが、審美歯科の広がりによって可能になります。日本人の有病率を引き下げ、医療経済の状況にも良い影響をあたえます。

審美歯科は「予防の医学」

美しい歯は健康で機能的にもすぐれています。歯を美しく、きれいにすれば健康になれます。たとえば歯並びをよくすればブラッシングがしやすくなり、みがき残しが少なくなるので、虫歯や歯周病のリスクが低くなります。

しかし、審美歯科によって予防できるのはそれだけではありません。ほかにも数々の全身的疾患が、歯を美しくすることによって予防できるのです。

特に歯周病を治療することをつうじて予防できる病気は数多くあります。ジンジバリス菌に代表される歯周病原因菌が唾液や食物の誤嚥によって肺に入り込むと、誤嚥性肺炎の原因となることがあります。誤嚥性肺炎は日本人の死亡原因で1割を占める病気です。また、ジンジバリス菌が血管に入ると、「血栓」や「アテローム性プラーク」を形成して血管を詰まらせたり血管壁に沈着したりします。脳の血管でこれが起きれば脳梗塞、心臓の冠動脈で起きれば虚血性心疾患となります。さらに「閉塞性血栓性血管炎」、通称「ビュルガー病」という腕や足の動脈が血栓で詰まってしまう病気も起こします。潰瘍や壊死が生じ、ひどい場合は腕や足を切断しなければならなくなる病気です。アテローム性プラークはまた、動脈硬化の原因ともなります。

感染性心内膜炎を引き起こした病原菌として、ジンジバリス菌が検出されたこともあります。感染性心内膜炎は、心臓の弁に細菌が感染して破壊していき、崩れたかたまりが全身に流れていき、塞栓となって心筋梗塞や脳梗塞を引き起こしていくおそろしい病気です。

糖尿病と歯周病がお互いを悪化させ合うネガティブスパイラルを生じることも知られています。糖尿病は失明や四肢の壊死などおそろしい合併症を引き起こします。

美しい歯を目指す審美歯科のタスクには、歯周病の予防・治療は当然のこととして含まれています。そのことによって、いまや「国民病」ともいうべき糖尿病や虚血性疾患を含む多くの病気を予防することができるのです。

歯を美しくすれば医療経済にもプラス

日本人の平均寿命と健康寿命の差は、男性で8.84年、女性で12.35年ほどあります。「健康寿命」とは、「日常的に介護を受けたり、寝たきりになったりせずに生活できる期間」をいいます。これと平均寿命との間に差があるということは、その差の年数分だけ、多くの人が低いQOLの暮らしをせざるをえなくなっているということです。

歯を美しくし、健康を保つことは、平均寿命と健康寿命の差を縮めることに貢献します。増大し続ける医療費を抑制することにもつながるでしょう。

歯を良くすることで有病率が下がり、医療費が抑制されることを示す統計データはたくさんあります。

2013年に香川県でまとめられた統計データによると、年間の医科医療費を歯周病の有無・重篤度別に見たところ、

  • 歯周病なし ……約14万5000円
  • 歯周病軽度 ……約39万7000円
  • 歯周病中等度……約43万6000円
  • 歯周病重度 ……約42万8000円
  • 無歯 ……約68万円

となっていました。

歯周病があるだけで、程度にかかわらず年間医療費が2倍以上、ほぼ3倍ちかくにまでふくれ上がります。歯を失った人にいたっては4.7倍です。
定期的に歯科の健康診断を受けている人の医療費は、受けていない人よりも安くなることがわかっています。これも2013年に香川県でまとめられた統計データですが、

  • 一度も歯科健診を受けていない人の年間医科医療費:46万円
  • 年に1回、歯科健診を受けている人:41万円
  • 年に2回、歯科健診を受けている人:38万円
  • 年に3回以上、歯科健診を受けている人:37万円

となっています。1年間に一度も歯科健診を受けていない人と、年3回以上受けている人との医療費には9万円もの差がついています。このほかにも、歯の本数が多いほど医科医療費が安く、少ないほど医科医療費が高くなることを示す統計があります。

さらに、歯をたくさん失っていて義歯でかむ機能をおぎなっていない人にくらべて、歯が多く残っているか、義歯でかむ機能をおぎなっている人の認知症発症率は4割ほど低いことが明らかになっています。

このように、歯を美しく健康にすることは、日本の医療経済に良い影響をあたえます。歯を美しくすることで、自分がしあわせになるだけでなく、子孫たちの助けにもなるのです。