審美歯科普及協会

歯についての豆知識

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歯の再生を目指して・人工再生歯研究

サメの歯をご覧になったことはあるでしょうか。ホオジロザメなどの歯は、口の内側に歯列がいくえにも重なっており、歯が何本も折れてしまったとしても、内側からどんどん予備の歯列がローテーションしてくるようになっています。

これに対し、人間の永久歯は無くしてしまえばもうそれっきりです。また生えてきてくれればどれほどありがたいことでしょうか。

実は、人間の歯を培養して再生させることを目指す研究はおこなわれています。現在のところマウスを用いた実験レベルですが、いずれは永久歯再生につながっていくかもしれません。

マウスの歯は伸び続ける

動物実験で使われているマウスは、「齧歯類(げっしるい)」とも呼ばれるネズミやリスの仲間です。その歯の特徴はすぐに思い浮かぶでしょう。前歯が2本、常に出ている感じです。(余談ですが、ミッキーマウスや『トムとジェリー』のジェリーには、なぜか2本の門歯が描写されていません。『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男にはしっかりとあるのですが。)

前歯、正しくは「門歯」と言いますが、マウスは上下のあごから2本ずつ、計4本が生えています。そして、このマウスの門歯には、「ずっと伸び続ける」という特性があるのです。

伸び続ける門歯を放っておくとどんどん長くなっていきますので、長くなりすぎると役に立たなくなります。するとマウスは死んでしまいます。そのため、マウスはしょっちゅうなにかモノをかんで門歯をすり減らし、適度な長さをたもつ必要があります。木片や木の実のかたい殻など硬いものを、彼らはほとんど常にかじっています。時には家の壁すらかじって穴を開けてしまうのは、ネズミたちの宿命のせいなのです。

歯の再生を目指す研究にマウスが用いられるのは、「ずっと伸び続ける」彼らの歯の仕組みの解明がヒントになりそうだからというのも、理由のひとつなのです。

マウスの歯胚から人工歯胚をつくる

これまでの研究は、妊娠したマウスの胎内にいる胎仔マウスから採取した歯胚(しはい)の細胞が使われています。歯胚とは、歯が成長するもとになる組織で、まだ石灰化・硬化していない、やわらかい組織です。この歯胚を、いったん細胞ひとつずつにバラバラにし、それからふたたび細胞のかたまりに結びつけていくことで人工歯胚を作っていきます。

この人工歯胚を培養し、十分な大きさと硬さを持つ歯に成長させる試みが、これまで重ねられてきました。

 

人工歯胚を培養する

人工歯胚の作製も重要なステップですが、それをどのように培養するかも重要な課題です。広くおこなわれているのは、実験動物に移植する「体内培養法」と、シャーレの中で培養する「体外培養法」です。

・体内培養法

主流といえるのは体内培養法の方です。マウスの歯胚をもとにして作られた人工歯胚を、実験動物の体内に移植し、歯を成長させます。歯胚を移植する場所としては、あごの骨はもちろん、皮膚の下、腹の中、腎臓の皮膜の下のこともあります。

体内に移植すれば血流により酸素と栄養が供給されるため、歯を育てるのに向いていると考えられています。この手法で、現在のところ東京理科大学のグループがマウスの歯の再生に成功しています。

・体外培養法

他方の体外培養法は、シャーレの中の培地で培養して歯の成長をはかります。シャーレ内で培養し成長させた歯を口腔に移植することにより、歯の再生を目指しています。最近では、マウスの歯の歯冠(歯茎のうえに露出している部分)だけを培養して歯根までのすべてをシャーレの中で再生させる実験が成功しています。

体外培養法は主流ではないアプローチですが、うまくいけば体内培養法よりも効率的な歯の再生技術につながっていくかもしれません。

再生歯によるインプラント

現在おこなわれている歯の再生研究は、さまざまな培養方法で幹細胞を培養し、天然の歯と同じ形状、同じ機能を再現できる「人工再生歯」を作り出すことを目標としています。

そして、この再生歯をこれまでのものに代わるインプラントとして用いることにより、歯の欠損を治療できるようにすることを目指しています。歯科以外の分野でも幹細胞を活用した再生医療はさかんに研究されていますが、歯についても同様に「究極の再生治療」を実現するために世界中で研究が進められています。現在すでに、歯槽骨や下顎骨に対しては患者自身の骨移植、あるいは骨再生誘導がおこなわれていますが、歯そのものについても「自分の細胞から培養した歯」になれば、理想的な親和性が達成されるでしょう。

 

まだ先が長い研究

マウスを用いた実験ではかなりの成果も上がっているのですが、同じ手法が人間の歯にも応用できるかどうかは今の段階では不透明です。したがって、人間が文字通り本当に自分の歯を取りもどせるようになるまでは、まだまだ長い時間がかかるでしょう。しかし、努力は世界中で続けられています。

 

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