審美歯科普及協会

歯についての豆知識

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歯は「齢(よわい)」をささえる小さな大黒柱

「年齢」の「齢」の字、「妙齢」という言葉にも使われますが、「はへん(歯偏)」を持つめずらしい漢字です。人間が年をとると歯がすり減ったり、さまざまな原因で歯を失ったりすることから、「歯」が「齢」という文字の柱である偏になったということのようです。その劣化が人生の残り時間の少なさを象徴しているわけです。逆にいえば、歯がしっかりしていればそれは豊かな生命力を象徴すると言えるでしょう。「妙齢」という言葉も、笑顔からこぼれる白く健康な歯をイメージさせます。

歯は生命をささえます。ここで歯の大切さについて、振り返っておきましょう。

食べ物を咀嚼(そしゃく)する

もちろん、歯が持つ第1の機能は「噛む(かむ)」ことです。食べ物をこまかく砕き、すりつぶし、唾液(だえき)となじませて、飲み込みやすくします。よく言われるように、「口腔は第1の消化器官」です。かむことで、胃腸の消化吸収を助け、負担を軽減します。

当たり前すぎてありがたさがわかりにくいですが、「野生動物にとって、歯を失うことは死に直結する」と言えば、その重要性がわかるでしょう。草食動物であれ肉食動物であれ、歯がなければ食べられませんから、それはほかの病よりもすみやかに動物に死をもたらします。

よくかむと唾液の分泌が促進されます。唾液には細菌を洗い流す効果や抗菌作用があります。よくかんで唾液を出すと、虫歯や歯周病のリスクが抑えられます。

味覚の一部

味覚をあじわうのは主に「舌」ですが、「かみごたえ」、「歯ざわり」も味覚の一部と言えるでしょう。きゅうりの小気味よい「ポリポリ」も、パスタのアルデンテの「もっちりぷりぷり」も、しっかりした歯があってこそ楽しめます。

そしゃくの刺激は視床下部にある満腹中枢に伝わり、食べ過ぎを防止するとも言われます。ダイエットのアドバイスでは、「一口食べたら、最低30回はかむこと」などとされることが多いです。

歯が健康か、義歯でかむ機能を取り戻している人は、歯を多く失っている人よりも認知症になりにくいというデータがあります。かむときの刺激が脳に伝わっていることが認知症を抑えている可能性があります。

現代人の食生活には、あまりかむ必要がない食べ物があふれているので、意識してよくかむようにした方がいいでしょう。

最初の門番

人間を含む動物の身体は、一本の「管」にたとえられます。生物の授業で習ったと思いますが、卵細胞は受精してから細胞分裂を繰り返し、どんどん多細胞になっていきます。それがある程度すすむと、「陥入」という現象が起こります。胚の一部にくぼみが生まれ、それが胚の内側に深く入っていき、やがて反対側までつらぬきます。こうしてできた「管」が、のちに口から肛門にいたる消化管になります。

この消化管の表面は、動物の身体にとって「外側」なのです。管の内部、呼吸器系と消化器系以外の臓器や骨、筋肉などは皮膚と呼吸器系・消化器系粘膜の間につつまれていますが、この領域が「内側」。健康であれば、基本的に無菌状態が保たれています。これに対し、口から胃、腸へといたる消化管は、「外」にさらされており、皮膚とならんで、外の雑菌その他の有害物から「内側」を守っているのです。

口は「外」からの最初の入り口です。そこから入ってくる物体をかんでこまかく砕く歯は、物体に含まれる固い異物などをより分けるはたらきもしています。歯は、身体の「内側」を守る最初の門番といえます。

発音・発声を助ける

正しい発音、美しい発声をたすけるはたらきもしています。歯が抜けたり、歯と歯の間にすき間があったりすると、きちんとした発音ができなくなってしまいます。また、声楽家などの歌手は、のどばかりではなく歯もたいへん大事にします。声の響きに大きく影響するからです。

顔の形をととのえ、表情をゆたかに

江戸時代、徳川幕府の将軍たちの顔を比較してみると、家康や秀忠はあごがしっかりしているのに対し、12代将軍・家慶や14代・家茂をみるとあごが細く面長になっていることがわかります。戦国のなごりが色濃い時代をすぎると将軍は貴族化し、幼少のころからほとんどかむ必要がない料理で育ちます。そしゃくすることが少なくなり、あごが発達しなくなったのです。

このように、顔の形は遺伝ばかりではなく環境や生活習慣も関係して変わってきます。小さいうちからしっかりかむ習慣を身につけると、歯が丈夫になるばかりでなくあごの骨も発達し、バランスのよい顔になります。

また、かむ動作は表情筋の発達もうながします。ととのった歯並びとかみ合わせは、表情ゆたかな顔をつくります。

力を生み出す

ぐっと力をこめるとき、人は奥歯をかみしめます。そうすることで集中力が高まり、筋肉のバランスがととのい、大きな瞬発力が生まれます。そのため、スポーツ選手が歯を痛めると、パフォーマンスが低下してしまうことも多いのです。

歯には、このように生きていく上で必要な機能から「生活の質」を高める機能まで、さまざまな大切な役割を担っています。