審美歯科普及協会

治療方法のご紹介

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どうしてフィクスチャーにチタンなのか

インプラント治療では、特に歯槽骨に埋め込むフィクスチャーの素材としてチタン(Titanium)が用いられますが、これにはちゃんとした理由があります。

チタンとは

その理由の前に、チタンという金属について概略を知っておきましょう。

チタンは原子番号22の金属で、地球の地殻に含まれる元素としては9番目に多い元素です。「強度があって軽く、耐食性にすぐれる」という特質があります。強度は鋼鉄以上でありながら比重は鋼鉄のおよそ半分であり、弾力性も鋼鉄を上回ります。アルミニウムと比較すると、比重は1.6倍ほど重いものの、強度は2倍になります。また、純チタンはさびやすい(酸化されやすい)のですが、表面に酸化皮膜をほどこすと(酸化チタン)、塩や酸に対して金や白金のような貴金属にも引けをとらない耐食性を持つようになります。また酸化チタンⅣという物質は白色の顔料として用いられるとともに、強力な光触媒効果を発揮して化学物質や細菌を分解する性質があります。

電気伝導性と熱伝導性がきわめて低い点も特徴です。熱伝導性が低いため、熱いものや冷たいものを飲食したときに、人工義歯からの熱刺激を伝えにくいこともインプラントに使われる理由のひとつになっています。

決して稀少な元素ではないのにチタン製品が高価なのは、精錬・加工のむずかしさがあるためです。鉱石から金属チタンを取り出すには何段階もの化学処理・熱処理が必要です。また、純チタンを変形させて成形するのは簡単なのですが、加熱して溶接しようとすると酸素との反応をさけるために酸素を遮断した酸欠環境下でおこなわなければなりません。
さらに、「軽量にして強靱」という特性から、チタンは兵器に向けた軍事利用が中心で、特に東西冷戦の時代には民生用としてはごくわずかしか出回っていませんでした。冷戦時代にも歯科インプラントにチタンは利用されていましたが、やはり相当に高価で、その頃の素材の主流は酸化アルミニウム(人工サファイア)などでした。

チタンの生体親和性

数々のすぐれた特性を持つチタンですが、歯科インプラントに用いられる理由となるもうひとつの特性が「高い生体親和性」です。チタン製、またはチタン合金製のフィクスチャーが歯槽骨に埋め込まれると、人体はチタンを異物とは見なさず、骨と結合させて一体化していくのです。

チタンのこの特性は、1952年にスウェーデンのルンド大学医学部のペル・イングヴァール・ブローネマルク教授が偶然に発見しました。ウサギの脛にチタン製の生体顕微鏡を取り付けて血流の観察実験をおこない、その後顕微鏡を取り外そうとしたところ、チタンと骨がくっついて外せなくなっていたのです。チタンと骨が、拒否反応を起こすことなく結合するこの現象を、ブローネマルクはギリシア語で骨をあらわすosteonと「統合」をあらわすintegrationを結びつけてオッセオインテグレーション Osseointegration と名付けました。

チタン製フィクスチャー

オッセオインテグレーションの効果を発揮させるため、インプラント義歯の土台となるフィクスチャーは純チタン、チタン合金、ニッケルチタン合金などの素材で作られます。このうちニッケルチタン合金製は骨との結合性が純チタン製、チタン合金製にくらべてやや劣りますが、形状の自由度が高く、形状記憶の性能を持たせることも可能です。ただし、ニッケルは金属アレルギーを起こしやすい点には注意が必要でしょう。

形状は、らせん状のネジ山を刻み込んだ「スクリュー型」がポピュラーです。骨と接する表面積が大きいため、結合による強い固定力が期待できます。

スクリュー型のほか、ネジ山を刻んでいない「シリンダー型」、中が空洞になっており、何カ所か穴が空いている「バスケット型」もあります。シリンダー型はスクリュー型にくらべると短期間での結合が弱いのですが、挿入が簡単なので、2回法でよく使われます。バスケット型は中空の内側まで再生骨組織が入り込んで結合するため、強力な固定力が期待できます。ただ、いくつか穴が開いている以上、強度は下がっており、大きな負荷がかかったときには破損もありえます。

いずれのタイプであっても、フィクスチャーの表面はつるつるに研磨されているのではなく、ナノメートルレベルの微小な粗さがあたえられています。その方が微細な凹凸に骨組織が入り込み、結合がより強固になるからです。

チタン製フィクスチャーと骨の結合にかかる期間

骨が回復する速度には個人差がありますが、インプラントのオペを行い、インプラント体と骨が結合するまでにかかる期間は、2週間から2、3ヶ月程度が目安です。

インプラントが骨との初期結合を得るまでは、余分な刺激を与えずに、安定させることが望ましいといえます。結合が弱いうちに物理的な力がくわわると、フィクスチャー周辺の骨や粘膜組織にダメージを与えたり、回復が遅れたり、結合しかけた骨とフィクスチャーの結合がはがれてしまう可能性があります。

そのため、通常は、初期固定までの期間は、回復の妨げにならず、日常生活にも影響の少ない仮歯を使用し、骨が安定してから、最終的な人工歯をセットするという流れで進められます。

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