審美歯科普及協会

治療方法のご紹介

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インプラントの上部構造・人工義歯のいろいろ

歯科インプラントは、歯槽骨に埋め込まれるフィクスチャー(人工歯根)、歯茎から突き出しており義歯の支柱となるアバットメント、そしてその上にセットされる義歯という3つのパーツから成ります。

アバットメントはフィクスチャーと同様にチタンで作られたものが主流でしたが、金属である以上は光を通さないため、明るいところでは歯に影が出てしまう点が審美的観点からはあまり好ましくないとされます。そのため近年はジルコニア製のものに人気が集まりつつあります。

ジルコニアとは

「ジルコニア」はアバットメントだけでなく上部構造義歯の素材としても使われますので、ここで解説しておきます。

「ジルコニア」というのは二酸化ジルコニウムの通称です。金属ジルコニウム(原子番号40)は、元素周期表でチタンと同じ列のすぐ下の段に位置づけられています。つまり最外殻電子の数がチタンと同じで、似た化学的特性を持ちます。
金属ジルコニウムは高温の環境下で水分子と反応し、二酸化ジルコニウムとなって水素分子を生成します。

Zr + 2H₂O → ZrO₂+2H₂

二酸化ジルコニウム・ジルコニアはこうして作られるわけですが、実は東日本大震災の時に福島第一原発で起きた爆発事故の原因はこの反応でした。原子力発電に用いる燃料棒のチューブ外殻には、熱中性子の透過性がよく核分裂の連鎖反応をさまたげないジルコニウムがよく使われるのですが、電源を喪失して制御不能になり、高温の水蒸気に満たされた炉心内部で上記の反応が起き、大量の水素ガスが炉内に充満、これが爆発して原発の「最後の砦」である外殻建築物の壁を吹き飛ばし、大量の放射性物質を大気中にまき散らした、というわけです。

それはさておき、二酸化ジルコニウムに酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウムなどを添加すると、立方体の形をした結晶構造が常温で安定する「安定化ジルコニア」という材質が得られます。これがインプラント義歯をはじめ、ラミネートベニアやブリッジにも使われる歯科治療材料となります。

インプラント上部構造の義歯をジルコニアで作成すると、耐久性、審美的特性、生体親和性(金属アレルギーの心配がないことも含めて)など、あらゆる点で質の高いものとなります。サファイアやルビーよりも少しやわらかいという絶妙な柔軟性もあるため、かみ合わせる相手の歯にダメージをあたえにくいという特性もあります。
問題はただひとつ、高価であるという点です。

次に、ジルコニア以外の義歯素材や技術を見ていきます。

オールセラミック

アバットメントと義歯をすべてセラミックでつくるのが「オールセラミック」です。自然の歯にかなりちかい色合いが出せます。金属を用いないので、もちろん金属アレルギーのリスクはありません。耐摩耗性にもすぐれています。ただ、「焼き物」、「陶器」に似たようなものなので、割れることがあります。それから、オールセラミックもコストはどうしても高めになります。

メタルボンド

アバットメントと義歯本体に金属を使用し、その表面に陶製素材(ポーセレン、セラミックスなど)を焼き付けたものです。イメージとしては「ホーロー引き」のような感じですが、強度はそれよりもずっと高くなっています。色合いも自然の歯にちかい表現が可能で、審美的にも納得できるレベルでしょう。内部が金属であるため、オールセラミックよりも強度に勝ります。デメリットとしては、用いる金属の種類によっては金属アレルギーのおそれがあることと、価格がやや高価である点が挙げられます。

ハイブリッドセラミックス

ハイブリッドセラミックスは、セラミックスなどの陶製素材とレジン(プラスチック)の混合素材で形成された義歯です。オールセラミックよりも割れにくくなっているうえに、かなり安価で導入できます。自然の歯にちかい色合いも出せますし、万が一欠けてしまったとしても修理が簡単であるところもメリットです。デメリットとしては、プラスチックにわずかな吸水性があるために、長期間使っていると変色することもある点があります。

金属の上部構造

上部構造をすべて金属でつくるケースです。インプラント義歯の中ではもっとも安価で済む選択肢です。耐久性もジルコニアを上回ります。ただ、固すぎることもあり、かみ合わせる相手の歯にダメージを与えてしまうリスクはあります。また、なによりも外見は「ふつうの金歯」ということになってしまいます。審美的にはよろしくないといわざるをえません。

インプラント義歯の上部構造には以上のような選択肢があります。安価なものから高価なものまでありますが、どれがもっともふさわしいかは患者の体質、口腔の状態、食生活をはじめとした生活パターンなどによって大きく左右されます。担当の歯科医師とじっくり相談して決めていくことが大切です。

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