審美歯科普及協会

治療方法のご紹介

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歯科診療の新技術・位相差顕微鏡

現在、虫歯や歯周病の治療は、肉眼による目視に加えて、顕微鏡やX線レントゲン撮影を利用して精度の高い診断をおこなうようになっています。そして、その顕微鏡やX線に関する技術も長足の進歩をとげています。

ここではそのひとつ、「位相差顕微鏡」について紹介します。

顕微鏡の観察方法

小中学校の理科の授業で、顕微鏡のあつかいはひととおり勉強します。対物レンズの先にあるミラーを調整して光を観察対象に当て、明るくして観察します。対象物を透過または反射した光を観察するこの方式を「明視野観察」と呼びます。もっとも一般的な観察法です。

このほかに、暗視野観察、位相差観察、微分干渉観察、蛍光観察、偏光観察などがあります。

暗視野観察は、対象物にななめ方向から光を当て、反射光を観察します。対物レンズに対象物を透過した光が入らないので、視野が暗くなります。

位相差観察は、光が「波」であることから生じる現象、「回折」と「干渉」を利用して、無色透明の対象物に明暗コントラストをつけ、観察します。

微分干渉観察では、対象物を透過した光の屈折率のちがい、対象物表面の形状による光の進み方のちがいを明暗コントラストにして観察します。

蛍光観察では、特定の波長の光を当て、対象物から出る蛍光を観察します。

偏光観察は、偏光フィルターを使って対象物の光学的特性を観察する方法です。

1. 位相差観察:生体組織を「生きたまま」観察できる

これらのうち、位相差観察は無色であったり透明であったりする対象物を染色などせずに観察できる方法です。通常の明視野観察では、無色透明生体細胞や細菌を染色する必要があります。しかし、そうすると生体細胞、細菌は変質、死滅してしまい、細胞分裂のようすや生きたままの姿を観察することはできません。

これに対し、位相差観察では、光の回折、干渉という2つの性質を利用し、明暗のコントラストをつけることにより無色透明な標本を見えるようにします。染色しないため、生体細胞の生きたままの姿を観察することができます。現在では生体組織の観察手段として主流となっています。

この位相差観察は、歯科では口腔内の細菌分布状況の検査に威力を発揮します。歯周病や齲蝕(うしょく)の原因菌の種類を特定できますので、薬剤を用いた除菌治療に役立ちます。

また、サンプルを顕微鏡拡大したイメージをモニターに映して患者自身が見ることも可能です。うねうねと活発に動き回る歯周病原因菌もあり、もちろん見ていて気持ちのいいものではありません。しかし歯科の疾患は常日頃の自己メンテナンスが予防の柱ですので、その意識を高めるためには良い勉強になることでしょう。

2. 位相差観察の原理:光の「波」としての性質を利用

光は、X線、ガンマ線のような放射線の一部、携帯電話やテレビ放送に使う電波と同じ「電磁波」です。電磁波のうち、動物が視覚でとらえられる波長域のものを「光」と呼んでいます。

2.1 回折と干渉

光が「波」であることから、「回折」と「干渉」という現象が起こります。位相差観察では、この回折と干渉を利用した観察方法です。

光の回折とは、光は波であるため光の進行方向に障害物があると、光の一部は直進せず、物体のワキから背後に回り込んで進む性質を指します。水面を伝わる波が島のあるところを通過する際、島に当たらなかった波は直進、島にぶつかった波は反射し、島のきわをかすめた波は島の背後に回り込むように内側に折れ込みます。光でも同じことが起こります。

また干渉とは、位相の異なる複数の波を重ね合わせると、それらの波が強めあったり弱めあったりする性質を指します。一部のヘッドフォンやイヤフォンにある「ノイズキャンセリング」機能は、やはり波である音について、この干渉という現象を利用しています。ある音に対して波の大きさ(振幅・音の大きさ)が同じで、位相が逆の音波を重ねると、波と波は打ち消しあって振幅ゼロとなり、音は消えます。反対に、波と波が同じ位相、あるいは同じ象限で重なりあっていると、波と波は強めあいます。これが干渉です。

2.2 振幅物体と位相物体

光がある物体の中に射し込んだ時、物体の中の不透明なものや染色されたものにぶつかると、光が弱まったりさえぎられたりします。これは光の強さが弱くなっていることを意味しており、言い換えれば「光の振幅が小さくなっている」ことになります。人間の目はこれを明るさの変化として知覚します。

このように光の振幅に変化をあたえる物体を「振幅物体」といいます。ふつうの明視野観察は、この振幅物体を対象として観察するものです。

これとは別に「位相物体」というものがあります。光が物体に射し込んだ時、その位相に変化をあたえるような物体です。人間の目は、光の振幅の変化は明るさの変化として知覚できますが、同じ明るさの光が同じ位相なのか、ズレた位相なのかを知覚・区別することはできません。

この位相の異同を可視化することによって人間の目で知覚できるようにした観察方法が位相差観察です。

2.3 位相差観察の原理

位相物体は無色透明な物体、染色していない生体細胞、細菌などです。そういった対象物に到達し射し込んだ光は、対象物をそれたところを通過した直接光と、対象物をかすめて回折した光とに分かれます。この2種類の光が結像光となります。つまり、

結像光 = 直接光+回折光 ・・・・(1)

と表すことができます。

位相物体の場合は光の吸収がないため、直接光と結像光の間での振幅の差、つまり明るさのちがいはあまりありません。しかし、回折光の方は回折によって位相はズレます。折れ曲がった分だけ回折光の位相は「遅れる」のです。

ここで(1)の式を変形すると、

回折光 = 結像光―直接光 ・・・・(2)

となります。

すると、回折光の振幅(明るさ)は、直接光と結像光とで位相のズレが大きいところでは大きく(明るく)なり、ズレが小さいところでは小さく(暗く)なることがわかります。

仮に直接光と結像光の位相のズレがかなり小さいケースを考えます。ゼロから立ち上がり、プラスのピークから下降、マイナスのピークで切り返し、ゼロにもどるまでを1サイクルとするサインウェーブでイメージすると、始点と終点のゼロ地点ではズレがやや大きくなり、プラスとマイナスのピーク付近でクロス、つまり重なります。ということは、回折光の振幅は、結像光と直接光のウェーブがゼロ付近に来た時に大きくなり、ピーク付近に来た時に小さくなってゼロになり、サイクル1/2のところでマイナスのピークに達し、サイクルのおしまいでふたたびプラスのピークに達する形になります。

回折光のピークは、結像光および直接光のピークからサイクルの1/4だけ遅れていることになります。

位相差観察では、この1/4の位相差に操作をくわえ、直接光と回折光の位相差が1/2、あるいは0になるようにします。たとえば、1/4+1/4という操作は、直接光のウェーブをサイクルの1/4分右方向にずらし、回折光との位相差を1/2にします。すると、上の「ズレが小さいケース」では直接光と回折光は逆位相となり、干渉の結果、結像光が暗くなります。対象物が暗くなり、背景が明るくなるコントラストです(ダークコントラスト)。反対に、直接光に1/4-1/4という操作をすると、直接光と回折光は同位相となり、結像光は明るくなります。対象物は明るく、背景が暗くなるコントラストになります(ブライトコントラスト)。

こうした明暗のコントラストを通して対象物を観察するのが位相差観察です。

3. 位相差顕微鏡で生きたままの細菌を観察・診断

この位相差観察法により、生体細胞や細菌を染色せずに生きたまま観察することが可能になります。

観察には「位相差顕微鏡」を使います。

位相差顕微鏡では、リング状の絞りから出る光が集光用レンズを通って試料に当たり、それからリング状のフィルターを持つ対物レンズに入ります。これら2つのリングが組み合わさって、試料の厚さや屈折率のちがう部分が明るさの差として見えてきます。

このため、ふつうの明視野観察用顕微鏡では見えにくい「核」などの細胞構成要素まではっきりと見えます。

歯科では、主に歯周病の診断・治療に活用されます。

位相差顕微鏡を使えば、歯周病原因菌の「極悪御三家」とされるトレポネーマ・デンティコーラ、ポルフィロモナス・ジンジバリス、タネレラ・フォーサイシアなどがはっきり確認できますので、適切な薬剤による除菌に結びつけられます。ブラッシングやスケーラーによる物理的排除では取り切れない菌まで除菌できるため、高い治療効果が期待できます。

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